タバコ、喫煙について

タバコを吸っていると肺癌になる危険性は以前から言われています。また他の癌とも関連性が指摘されています。タバコと癌の関連性に関しては比較的広まっていると思いますが、タバコは狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などの動脈疾患とも強く関連があります。

 私も、今までにタバコが主な原因と考えられる狭心症・心筋梗塞などを多数診てきました。
 タバコの中の成分(ニコチンなど)やタバコの煙に含まれる一酸化炭素などが血管を傷つけて動脈硬化をきたしていくことがわかっています。

 火事による死亡事故のニュースで一酸化炭素中毒が原因として報道されることもあり、一酸化炭素を聞いたことがあるとも多いと思います。
 一酸化炭素に関しては環境基準が決まっており、公害対策として連続する24時間における1時間値の平均が10ppm以下にするよう決まっています。(環境省のホームページに詳細あり)
 禁煙外来では吐き出した息(呼気)にどれくらい一酸化炭素が含まれているかを調べる検査を行います。それで調べてみると朝早くタバコを1本吸ってきたという人が、9時の検査で呼気一酸化炭素濃度が20ppm以上になっていることがよくあります。家族に迷惑をかけないために外でタバコを吸ってきているという人も多いと思いますが、目の前で吸っていなくても吐き出した息にはしばらく環境基準を超えるような濃度の一酸化炭素が含まれており、周りのひとの健康に悪影響を与えることになります。家族の人が吸ったタバコの煙で狭心症の発作を起こした人も多数経験しています。

タバコは自分だけでなくまわりの人にも病気を引き起こします。

→ そのために受動喫煙防止条例等が制定されています。

ニコチン依存と禁煙外来

タバコを止めたいのにやめられない原因として

  1. タバコに含まれるニコチンが切れることによる離脱症状
  2. 習慣・クセ(タバコを吸いたいと思う前に手がのびてしまうなど)

があげられます。 禁煙外来ではニコチンの離脱症状を抑える薬を必要に応じて処方することになります。禁煙外来をやっていると「薬だけ飲めば簡単にやめられるんでしょ」と十分な禁煙の覚悟ができていないうちに病院に来る方も多いですが、薬だけで禁煙しようというのは甘い考えです。

 習慣性脱却のために、タバコを吸いたくなったら体を動かす・喫煙具を処分する・生活のリズムを変えてみる、などの生活習慣改善が重要になってきます。

また保険診療で禁煙外来を行うためには、「直ちに禁煙することを希望している患者であること」との条件が入っています。来院時にはすぐの禁煙の意思が乏しいものの禁煙指導によりその場ではすぐ禁煙しますと表明した人には禁煙外来を行ってきましたが、そのような人は禁煙成功率が低い印象があります。また中途半端に禁煙外来を始めて失敗したさい、再度禁煙外来を受けたいと思っても初診時から1年経過しないと保険診療での禁煙外来はできません。
科学的な治療の重要性は重々承知していますが、こと禁煙治療に関しては

必ず禁煙をするんだという覚悟が重要になってきます。禁煙の覚悟をしっかりし、生活改善を行ったうえで禁煙補助薬を使用すると、「思っていたより楽に禁煙できた」という結果がついてきやすくなります。

狭心症・心筋梗塞

 心臓は体中に血液を送り出すポンプの役割をしています。心臓の中に血液がいっぱいありますがそこから栄養ももらえるわけではありません。心臓を出た直後に心臓を養う血管が枝分かれしており、その血管が心臓を上から冠のように覆って心臓を栄養しています。冠の様な血管とのことで冠動脈といいます。 この冠動脈に障害が起こって十分な血液が心臓に届けられないと胸痛(胸が重苦しくなる・締め付ける等)が起こります。冠動脈が急に詰まってしまうと栄養されている心臓が壊死してしまいます(この状態が急性心筋梗塞)。

狭心症の原因としては、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、喫煙、家族歴などがあります。

 狭心症は大きく、運動しているときにおこる狭心症(労作性狭心症)、休んでいるときにおこる狭心症(安静時狭心症)に分けられます。

労作性狭心症の多くは動脈硬化が原因です。動脈硬化により血管が細くなり血液の流れが滞ります。動いていないときはそれでも症状ないものの、動くとその分心臓も働かないといけなくなり心臓により栄養(血液)が必要になるものの血管が細くて届かなくなります。そのために胸痛が起こります。

もちろん例外もあり、運動によって引き起こされる冠攣縮性狭心症もあります。

 また元々運動時に胸痛があった人が安静時にも胸痛が出てくる場合には心筋梗塞に一歩手前の状態(不安定狭心症)のサインであり、基本的には入院での対応が望ましい状態です。

狭心症の治療

狭心症の治療としては

  1. 生活改善 + 薬物治療
  2. カテーテルによる治療(ステント治療など)
  3. バイパス手術

が、あげられます。クリニックで対応するのは①になります(冠攣縮性狭心症の場合には①のみ)。これは②③をやった際にも継続して必要になってきます。

まず生活改善ですが、禁煙、減塩、体重減量(必要に応じて)、適度な運動などがあげられます。
特に禁煙に関しては非常に重要で、禁煙しないと冠攣縮性狭心症に関しては症状がコントロールできないことも多いです。またせっかくステント治療を行っても、喫煙を続けることで治療した部位が再度狭窄しやすくなったり、ほかの血管に狭窄が出現しやすくなります。

 動脈硬化による狭心症の場合には血をサラサラさせる薬(アスピリン)が代表格になります。ステント治療をした場合には血をサラサラさせる薬を2種類内服する必要があります(入れた状況にもよりますが途中で1剤に減らすのが通常です)。
 血管の痙攣による狭心症(冠攣縮性狭心症)の場合には、血管を広げる薬(第一選択はカルシウム拮抗薬)が重要です。冠攣縮性狭心症の患者さんが急にカルシウム拮抗薬を中止することで突然死することもあり、自己判断での中止は非常に危険です。
そのほかにもコレステロールの薬や血圧の薬、必要に応じて硝酸薬(ニトログリセリンなど)などを適切に調節していく必要があります。